analytica 2026後に見えてきた、実験室機器選定の新基準
単体性能から「つながる力」へ
Raman精機 公式サイト週間コラム · 第25週
執筆日:2026年6月16日
キーワード:analytica 2026 · 実験室自動化 · デジタル化 · 機器選定 · データ連携 · 日本市場
はじめに:2026年の展示会が示したのは、「高性能機器が増えた」という事実だけではない
2026年3月24日から27日まで、ドイツ・ミュンヘンで analytica 2026 が開催されました。主催者の公式発表によれば、今回は 40か国から1,135社が出展し、115か国から約35,000人が来場 しています。
この数字だけでも、世界の実験室産業が引き続き活発であることは十分に伝わります。しかし、今回の analytica 2026 が日本市場にとって本当に示唆的だったのは、出展規模そのものよりも、機器の評価軸が確実に変わりつつあることです。
主催者の公式インタビューでは、今年の analytica を形づくる要素として、AI、デジタルトランスフォーメーション、自動化、学際的なデータ活用が繰り返し強調されました。また公式の出展ハイライト紹介でも、質量分析、ラマン分析、アスベスト検査、画像解析、ラボソフトウェアなど、ハードとソフトをまたぐ展示が目立っています。
つまり、いま世界の実験室機器市場で起きている変化は、「新しい装置が増えた」という単純な話ではありません。単体で優れた機器を選ぶ時代から、他の装置・ソフトウェア・運用フローとつながる機器を選ぶ時代へ移っているのです。
一、2026年の競争は「測定性能」だけでは決まらない
もちろん、測定精度、再現性、処理速度、安定稼働は、今でも装置選定の中心です。ここが弱ければ、どれほどソフトウェアが整っていても評価されません。
ただし、一定水準以上の性能を持つ製品が増えた現在、日本のお客様が実際の比較で見ているのは、次のような項目です。
- 自動化設備や周辺機器と接続できるか
- 測定データを上位システムへ渡しやすいか
- 監査、記録、SOP運用に必要な資料が整っているか
- 消耗品、交換部品、保守体制が長期運用に耐えるか
- 仕様変更やソフト更新時に、現場が混乱しないか
特に日本市場では、機器は単独で導入されるのではなく、既存の実験フロー、品質管理手順、記録体系の中に組み込まれます。そのため「装置そのものが優れているか」だけでなく、運用の中で摩擦なく機能するかが、導入可否を左右します。
二、analytica 2026が示した3つの方向性
Raman精機では、analytica 2026 の公式発信から、今後の装置選定に影響を与える方向性を大きく3つに整理しています。
1. 自動化は一部の先進ラボだけのテーマではなくなった
主催者インタビューでは、AIやデジタル変革と並んで、自動化が今回の主要テーマとして明示されていました。これは、従来の「大規模ラボ向けの先進設備」という位置づけから、人手不足、再現性確保、作業標準化への現実的な対策として自動化が広がっていることを意味します。
日本の実験室でも、全工程を一度に自動化するより、前処理、試料搬送、記録整理、異常検知といった一部工程から段階的に自動化を進めるケースが増えています。ここで重要なのは、装置単体の性能よりも、将来的に自動化ラインへ組み込みやすい構造かどうかです。
2. ソフトウェア連携は「付加価値」ではなく「前提条件」になりつつある
公式ハイライトでは、ソフトウェア、データ処理、AI活用を含む展示が強く打ち出されていました。これは、装置メーカーに対する市場の期待が、測定結果を出すところで終わらず、その結果をどう記録し、比較し、共有し、後工程へ渡すかに移っていることを示しています。
日本市場では特に、CSV出力の可否、ユーザー権限管理、監査証跡、LIMSや既存システムとの受け渡し方法、エラーログの扱いなどが、導入審査で細かく見られます。性能の高い装置でも、この接続設計が弱ければ、現場導入は止まりやすくなります。
3. 新製品よりも「運用可能性」の説明力が問われる
公式の展示紹介では、複数のワールドプレミアや新規ソリューションが挙げられていました。新しさは確かに注目を集めます。しかし、日本のお客様がその次に必ず確認するのは、次のような実務項目です。
- 日本語または英語で運用資料が準備されているか
- 校正、保守、トラブル対応の流れは明確か
- 消耗品や交換部品は何年支えられるか
- ソフト更新や仕様変更時の通知ルールはあるか
- 国内導入後の問い合わせ窓口は誰か
つまり、展示会で見える「新しさ」を、日本市場で求められる「継続運用の安心」へ変換できるかどうかが、実際の商談では決定的に重要です。
三、中国メーカーが日本市場に入る際、見落としやすいギャップ
中国の実験室機器メーカーは、この数年で設計力、加工精度、制御ソフト、価格競争力の面で大きく前進しています。analytica のような国際展示会でも、存在感は確実に増しています。
一方で、日本市場に入る段階で見落とされやすいのは、技術力ではなく、接続と運用の説明責任です。
よくあるギャップは、次の通りです。
- 装置仕様は優れているが、外部システム連携の説明が曖昧
- UIは新しいが、記録保存や監査対応の前提が弱い
- 初回デモは良好だが、保守部品や消耗品の供給設計が見えない
- ソフト更新の頻度は高いが、日本側へ伝える資料と手順が不足している
- 技術説明と営業説明の間にズレがあり、導入後の責任分界が不明確
日本のお客様にとって、これは細かすぎる要求ではありません。むしろ、装置を止めずに使い続けるための、最低限の確認事項です。
四、Raman精機の役割:機器選定を「接続可能な提案」に変える
Raman精機が重視しているのは、海外の実験室機器を単に紹介することではなく、日本市場で実際に導入・運用できる状態まで整理することです。
具体的には、次のような点を事前に確認・整備します。
- 日本側の使用目的と装置仕様のすり合わせ
- 周辺機器、自動化工程、既存ソフトとの接続可能性の確認
- 出力形式、データ管理、ユーザー権限、監査対応の整理
- 日本語または英語での技術資料、FAQ、保守情報の整備
- 消耗品、交換部品、更新通知、問い合わせ窓口の整理
- 導入後に発生しやすい運用上の摩擦を、商談前に洗い出すこと
これは派手な仕事ではありません。しかし、analytica 2026 のような展示会で見えた世界の技術トレンドを、日本のお客様の現場へ落とし込むには、この地道な整理が欠かせません。
中国メーカーにとっては、良い技術を過小評価されないための支援になる。日本のお客様にとっては、海外製品導入の不確実性を下げる支援になる。Raman精機 は、その間を埋める実務の橋渡し役でありたいと考えています。
五、おわりに:次に選ばれるのは、「つながる装置」である
analytica 2026 が示した最大の変化は、世界の実験室市場が、単体スペックの競争だけでは動かなくなっていることです。
これから選ばれる装置は、測れる装置、速い装置、安い装置であるだけでは足りません。つながる装置、説明できる装置、運用し続けられる装置であることが、ますます重要になります。
Raman精機は、こうした変化を一過性の流行としてではなく、日本と中国の実験室産業が次の段階へ進むための構造変化として受け止めています。展示会で見えた技術を、そのまま紹介して終わるのではなく、選定・資料・供給・運用まで含めて整理し、長く使える提案へ変えていくこと。それが、私たちの役割です。
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